前十字靭帯の疾患の特徴・好発・治療内容などについて

疾患の特徴

前十字靭帯(ACL)は脛骨の前内側より大腿骨の後外側に走行し、大腿骨に対して脛骨が前方に移動するのを制御している。外力が前方に加わったり、ジャンプ着地時や急激なストップ時などに損傷されることが多く、損傷されたACLは自然治癒機能が低いため、いったん損傷されれば機能不全状態が残存する頻度が高い。ACL不全膝においては、大腿四頭筋が急激に収縮するような動作時(ジャンプ着地時、急激なストップ時など)に脛骨の亜脱臼を繰り返し、半月損傷や軟骨損傷の合併をきたし、二次的に関節症変化を呈するようになる。したがって、若年者やスポーツ愛好家の場合には靭帯再建術が選択されることが多い。

好発

性差:女性(2~8倍) ホルモンの差による
受傷機転:フットボール・スキー・バスケットボール・サッカーなどの
スポーツをする人に多い
損傷されやすい肢位:大腿骨に対する下腿の前方移動、内旋、膝関節外反、過伸展

ACL損傷のリスクファクター

内因性リスクファクター

静的下肢アライメント
Q角
大腿骨顆間窩の形状、サイズ
関節弛緩性
ホルモン

外因性リスクファクター

筋力
関節固有感覚
神経筋協調機構
動的下肢アライメント
シューズとサーフェス

静的下肢アライメント・Q角について

男性に比較して女性の下肢の形態の特徴としては、①大腿骨の前捻が強い、②膝外反
傾向が強い、③脛骨の外旋が大きい、④足部が回内位となりやすいなどが挙げられる。
また、相対的に広い骨盤幅と短い大腿骨長のため、女性ではQ角が大きくなる。Q角の増
大は、大腿四頭筋の収縮による膝蓋骨の外側への牽引力増加をもたらし、ACL損傷の危険
肢位である膝外反、下腿外旋を増大させる。骨性の下肢アライメントをトレーニングで
矯正することは不可能であるが、Q角は大腿四頭筋のトレーニングによって減少させるこ
とが可能とされている。

Q角:上前腸骨棘と膝蓋骨中央を結んだ(大腿四頭筋長軸)、および膝蓋骨中央から脛骨粗面
上縁中央線(膝蓋腱軸)を結んだ線のなす角。正常は20°以下(平均14°)このQ角が
大きい程、膝伸展筋力や荷重ストレスにより膝蓋骨を外方に牽引する力が生じ、膝蓋
骨の外方不安定性が大きくなる。

筋力・関節固有感覚・神経筋協調機構

男性に比較して女性の膝関節周囲筋力が弱いことは周知に事実であり、大腿四頭筋や
ハムストリングスの筋力低下は膝関節を安定化させ、不意な外力から保護するという面
で大きなマイナス要因となる。
女性では膝関節前方負荷に対して、大腿四頭筋がハムストリングスよりも優位に反応
することが報告されている。このような状況では、大腿四頭筋の筋活動は膝関節の安定
化よりも、むしろ膝前方負荷を助長するように働き、前十字靭帯への負担をさらに増加
させる。身体に加わる外力やそれによって生じる姿勢や肢位の変化を感知し、筋制御を
行うメカニズムは神経筋協機構とよばれ、その際情報入力の役割を担うのが関節固有感
覚である。関節固有感覚の低下は神経筋協調機構の破綻を来たし、不意な外力に対する
関節防御の機能不全を来たす。

動的下肢アライメント

ジャンプの着地やカッティング動作はACL損傷の受傷機転として代表的なものであり、
女性は男性に比較して有意に浅い膝屈曲角度でこれらの動作を行っていることが証明さ
れている。その結果、膝関節に加わるエネルギーを筋で十分に吸収できず、骨や靭帯な
どの他の構成要素にかかる負担が増大する。

靭帯再建術

スポーツ活動を望む若い患者には前十字靭帯再建手術を選択する。また、日常生活で
膝崩れを繰り返す場合も再建手術が適応となる。
靭帯再建の素材には自家腱、同種腱、人工靭帯などがあるが、自家腱では骨付き膝蓋
腱や半腱様筋腱などの屈筋腱がよく用いられている。再建素材の設置部位は前十字靭帯
の解剖学的付着部位を基本とする。また、再建靭帯が顆間窩に挟まらないよう顆間窩が
狭い場合には十分に拡大する操作(顆間窩形成術)が必要となる場合がある。人工靭帯を
使用すれば自家組織を犠牲にする必要がなく初期より強度が確保されるので後療法は短
いが、再建靭帯の最断裂が問題になる。最近は手術浸襲が少ない鏡視下での再建術が主
な手術法となっている。後療法では再建靭帯に過度の負荷がかからないように注意しな
がら、可動域改善と筋力増強訓練を行う。
自家腱や同種腱を用いた例では術後6ヶ月~1年でスポーツ復帰が可能となる。

治療内容

筋力増強運動(大腿四頭筋・膝関節屈曲筋の筋力増強をメインに行う。)
関節可動域運動(膝の屈伸運動を行う。膝蓋骨の可動性を出す。CPMの使用も行う。)
バランス訓練(立位での訓練を行う)
歩行訓練・スポーツ復帰に向けての動作訓練

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