上肢の運動学(肩関節周辺)

今日は上肢の運動学(肩関節周辺)についての簡単レポート公開していきます^^

肩複合体(Shoulder complex)

胸骨、鎖骨、肋骨、肩甲骨および上腕骨が関係する一連の4つの関節より構成される。
→肩甲胸郭関節、胸鎖関節、肩鎖関節、肩甲上腕関節
この一連の関節は上肢に大きな可動性を提供し、その結果、手による物の操作能力を高める。そのため、外傷あるいは疾病は肩の動きをしばしば制限し、上肢全体の効率を大きく制限する。
肩複合体では、単一の筋が別個に働くことはまれである。チームとして働く筋は多くの関節にまたがって協調して作用する。この肩周辺筋の高度な協調性によって自動運動能や制御機能は高まり、可動範囲も大きくなる。

肩甲面(Scapular plane)

安静時では、肩甲骨は胸郭の後-外側面上に位置し、この関節窩は前額面に対して前方約30°を向いている。この肩甲骨の向きは肩甲面と呼ばれる。
腕を頭上に挙上する際、肩甲骨と上腕骨はこの運動面に沿って動くことが多い。

肩甲胸郭関節(Scapular on thoracic)の運動

肩甲胸郭関節は本質的に真の関節ではなく、肩甲骨前面と胸郭の後外側面との間の接触点である。肩甲骨と胸郭との間で生ずる運動は胸鎖関節と肩鎖関節の共同の結果である。
運動方向
・挙上:胸鎖関節での挙上と肩鎖関節での下方回旋の組み合わせ
・下制:胸鎖関節での下制と肩鎖関節での上方回旋の組み合わせ
・前方突出:胸鎖関節での前方突出と肩鎖関節での軽度の水平面調整の組み合わせ
・後退:胸鎖関節での後退と肩鎖関節での軽度の水平面調整の組み合わせ
・上方回旋:胸鎖関節での挙上と肩鎖関節での上方回旋の組み合わせ
・下方回旋:胸鎖関節での下制と肩鎖関節での下方回旋の組み合わせ
・内転
・外転

胸鎖関節(Sternoclavicular joint)の運動

胸鎖関節は鎖骨の内側端、胸骨の鎖骨関節面、それに第1肋骨軟骨の上縁が関係する複雑な関節である。この関節は体幹と上肢のそれぞれの骨格同士を連結する上肢の基部となる関節である。
運動方向
・挙上:鎖骨骨頭の凸面が胸骨の凹面上で上方へ転がると同時に下方へ滑る。
・下制:鎖骨骨頭の凸面が胸骨の凹面上で下方へ転がると同時に上方へ滑る。
*鎖骨の挙上と下制は、前後軸の周りでほぼ前額面と平行に生ずる。
・前方突出:鎖骨骨頭の凹面が胸骨の凸面上を前方へと転がり滑る。
・後退:鎖骨骨頭の凹面が胸骨の凸面上を後方へと転がり滑る。
*前方突出と後退は垂直軸の周りでほぼ水平面と平行に生ずる。
・長軸回旋:肩を外転あるいは屈曲する際、鎖骨の上面はおよそ40~50°後方へ回旋する。腕を体側に戻すと、鎖骨は元の位置へと反対方向へ回旋する。
胸鎖関節を安定させている組織
・胸鎖乳突筋
・関節円板
・肋鎖靱帯
・鎖骨間靱帯
・前、後胸鎖靱帯

肩鎖関節(Acromioclavicular joint)の運動

肩鎖関節は鎖骨の外側端と肩甲骨の肩峰の間の関節である。肩峰上の鎖骨関節面は内側かつやや上方を向き、鎖骨上の対応する肩峰関節面と適合している。さまざまな形の関節円板が多くの肩鎖関節には存在している。
運動方向
・上方回旋:肩甲骨の上方回旋は鎖骨の外側端に対して肩甲骨が上方かつ外方へ弧を描くように回旋する際に生じる。この運動は肩甲胸郭関節での包括的な上方回旋にとって大きな要素として貢献。
・下方回旋:この回旋は解剖的肢位に肩甲骨を戻すことであり、力学的に肩の内転あるいは伸展と関係している。
・水平面での回旋適合:肩鎖関節における水平面での調整は垂直軸で生じ、肩甲骨の内側縁を胸郭外側面に向けて回転する。
・矢状面での回旋適合:肩鎖関節における矢状面での調整は内・外側軸の周りで生じ、肩甲骨の下角を傾斜あるいは胸郭外側面に向けて回転する。
*回旋適合は肩甲胸郭関節における運動の質や量を高めるのに役立っている。
肩鎖関節を安定させている組織
・三角筋
・僧帽筋
・関節円板
・烏口鎖骨靱帯

烏口鎖骨靱帯(Coracoclavicular ligament)

鎖骨の下面と肩甲骨の烏口突起の間に張るきわめて強力な靱帯である。この靱帯は、鎖骨が肩甲骨と自由上肢骨の重みを支える。つまり肩鎖関節に付加的安定性を与える重要な役割を果たしている。菱形靱帯と円錐靱帯からなる。
① 菱形靱帯(Trapezoid ligament)
烏口突起の上面から鎖骨の菱形靱帯線へと上外側方向に伸びている。棘鎖角の挟まりを抑制する。
② 円錐靱帯(Conoid ligament)
烏口突起の近位底部から鎖骨の円錐靱帯結節へとほぼ垂直方向へ走っている。

C-C mechanism(烏口鎖骨靱帯のメカニズム)

外側に菱形靱帯、内側に円錐靱帯がある。烏口突起の尖端が下方へ移動(下方回旋)すると菱形靱帯が緊張し、逆に烏口突起の基部が下方へ移動(上方回旋)すると円錐靱帯が緊張する。
機能:肩甲骨のつり下げ、鎖骨の上昇制御、棘鎖角の増減制御

肩甲上腕関節の運動

肩甲上腕関節は上腕骨の大きな凸状の骨頭と凹状の浅い関節窩との間で形成される関節である。この関節は肩に広範囲な可動性を生み出すために一緒に運動する肩甲骨と協力して機能する。解剖学的肢位では関節課の関節面は肩甲面において前外方を向いている。
運動方向
・外転、内転:前額面における前後軸の周りで生ずる上腕骨の回転運動。外転時の関節包内運動には凸状の上腕骨頭の上方への転がりとこれと同時に生ずる下方への滑りが含まれる。
・屈曲、伸展:矢状面において内側-外側軸の周りで生ずる上腕骨の回転運動。関節包内運動として関節窩表面上の固定点の周りでの上腕骨頭のスピン運動が生ずる。この場合、転がりも滑りも必要ない。
・内旋、外旋:水平面における軸回旋で、垂直軸すなわち上腕骨体を貫く長軸の周りで生ずる運動。外旋の関節包内運動は上腕骨頭と関節窩の横径上で生ずる。上腕骨頭は関節窩上で後方へ転がると同時に前方へ滑る。内旋の関節包内運動もこれも類似しているが、転がりと滑りの方向が逆となる。

腱板筋(Rotator cuff muscles)

腱板(回旋筋腱板)は4筋の停止部がともに肩関節を包みこむようにして板状に形成されている。肩関節包に癒合して上腕骨上端に停止し、肩関節を補強する。腱板は肩甲上腕関節の自動的関節包内運動の制御に深くかかわっている。
腱板構成筋
・棘上筋:上腕骨頭を関節窩に直接圧迫する。
・肩甲下筋、棘下筋、小円筋:上腕骨頭に下向きの並進力を生ずる。
・棘下筋、小円筋:上腕骨頭を外旋する。

肩甲上腕リズム(Scapulohumeral rhythm)

肩甲上腕関節の外転あるいは屈曲は肩甲骨の上方回旋と同時に起こる。
健常な方では肩甲上腕関節の外転と肩甲胸郭関節の上方回旋との間には、自然な運動学的なリズムあるいはタイミングが存在する。Inmanはこのリズムは外転のほとんどを通じて驚くほど一定していて、その比率は2:1になると報告している。
例)肩関節外転180°:肩甲上腕関節120°外転+肩甲胸郭関節60°上方回旋

臼蓋上腕リズム(Glenohumeral rhythm)

肩関節内には、臼蓋上腕リズムと呼ばれる臼蓋に対する上腕骨頭の運動がある。(腕下垂時)
・Ship roll:骨頭が上下に移動する運動
・Ball roll:臼蓋上を骨頭がボールのように転がる運動
・Gliding:臼蓋上を骨頭が滑る運動
・Rotaition:臼蓋上での回旋運動
これらの運動の異常
・Loosening:Ship rollの異常で、上下への移動過剰。
・拘縮肩:Ball rollやGlidingの異常による。
・Slipping:要支持関節でのRotationの異常で、Rotation時に骨頭を臼蓋が支持しきれず、骨頭が外側へ転位した状態。

ゼロ・ポジション

肩甲骨面上で約130~150°挙上した外転位である。この肢位では、上腕骨と肩甲棘の長軸が一致する。一般に腱板修復術の術後固定肢位として利用されることが多い。

Force couple

1つの運動を遂行する際に、2つまたはそれ以上の筋肉が共同してかかわること。
例)肩甲骨の上方回旋
僧帽筋上部および下部線維と前据筋下部線維はForce coupleを形成し、協力して肩甲骨を上方に回旋する。これら3つの筋の力は肩甲骨を同じ方向に回旋させる。僧帽筋上部線維は鎖骨への付着により肩甲骨を上方へ回旋する。前据筋は、この作用を行う上で大きなモーメントアームを有するため最も効果的な働きをする。さらには、これと同じくらい重要なことに三角筋や棘下筋のような遠位可動筋にとって安定した付着を付与している。

翼状肩甲骨(Winding scapula)

肩甲骨の内縁を胸郭に引き付ける働きをする前据筋の機能不全により肩甲骨の内縁が後方に浮き上がり突出したような状態になること。
その原因は支配神経である長胸神経が腕神経叢損傷に付随して、あるいは頸部手術の際に単独に損傷を受けたりして麻痺した結果による場合と、進行性筋ジストロフィーなどの筋疾患による場合などがある。神経麻痺によるものは麻痺の回復とともに回復が期待されるが、麻痺の回復の困難な場合、および筋疾患においては回復は望めない。単独麻痺ではその機能は周囲の筋群によりある程度代償されるが、多くの場合、周囲の筋群も含めて障害を受けるため肩甲骨の胸壁への固定性が悪くなり、上肢の挙上が困難となる。必要に応じ肩甲骨の胸壁への固定術を行う。

Quadrangular space

小円筋、大円筋、上腕三頭筋長頭、上腕骨で作られる間隙は四角腔を形成している。腋窩神経、後上腕回旋動脈が通過する。

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