関節可動域運動の基礎知識(関節とは・拘縮とは・効果・目的・種類など)

関節可動域運動の基礎知識についての簡単レポート公開していきます。

関節とは

関節は、2個以上の骨がその一部で互いに接して連なることにより運動機能が保たれている状態といえる。しかしすべての関節に可動性があるとは限らず、頭蓋骨の縫合にみられるような線維性に連結された不動関節も存在する。一般に関節可動域運動の対象となるのは、可動関節である滑膜性関節である場合が多く、それは関節面の形状により球関節,精円関節,類状関節,鞍関節,蝶番関節,車軸関節,平面関節に分類される。

骨運動学と関節運動学

人体の関節運動は骨運動学と関節運動学大と別される。骨運動学は,3次元的空間で骨が機械的軸を中心に運動する状態で,解剖学的関節を構成する2つの骨の動きを幾何学的変位としてとらえるものである。これは一般に関節可動域検査に使用している屈曲,仲展,外転,内転,内旋,外旋といった用語で表す。この運動方向は解剖学的立位姿勢を運動の開始肢位とし,矢状面,前額面,水平面という互いに直交する3つの基本面上の動きとして規定される。
関節可動域運動を行う際に,骨運動学と同様に注意深く観察しなければならない運動として関節運動学があるため、関節運動学では関節面相互の運動を関節包内運動と呼び,副運動と構成運動に分けている。副運動は,随意的には起こしえない関節包内のわずかな関節面の運動で2つのタイプがある。第1型は随意的運動に抵抗が加わったときに起こり,関節の構造的な許容限界まで動く関節の運動である。第2型は筋が完全にリラックスした状態で他動運動的にのみ起こる関節面の離開,滑りなどの動きであり,関節の遊び打ともいわれる。構成運動は骨運動に伴って生じる関節面の運動で,例えば膝屈曲時には関節面は1点を支点とした単独運動を行っているわけでなく,運動軸も関節面の接触点も常に移動する。基本的な構成運動は,滑り,軸回旋,転がりの3つであり,生体では通常2つ以上の構成運動が組み合わさった複合運動となる。ここであげた関節包内運動は滑膜性関節の種類によって骨運動と運動方向が異なる場合があることに注意しなければならない。これは「凹凸の法則」として知られており,関節可動域運動だけでなく筋力増強運動などにおいても考慮すべき重要なポイントとなる。

関節の安定性と運動性

関節の運動性は関節面の形状によってあらかた規定されているが,その運動を滑らかに行うためには関節の安定性が良好である必要性がある。関節の安定性は関節の形態,靭帯,筋肉のほか関節包,半月板,関節周囲組織などが関与しており,これらの要素が関節安定性に果たす割合は関節によって異なっている。

最終域感

関節の可動性を見る場合,関節可動域を制限する構造には各々独特の感じがあり,それは他動運動を行っているときに最終域感として感知することができる.最終域感には生理的(正常な)最終域感と病的(異常な)最終域感があり,正常な最終域感は次のようなものがある。.

1)軟部組織性
軟部組織の接触による最終域感で,膝屈曲時の大腿と下腿の後面軟部組織間の接触などがあげられる。

2)結合組織性
結合組織の伸張による最終域感で,筋の伸張として膝伸展位での股関節屈曲(ハムストリングス筋の他動的な弾性のある緊張)や関節包の伸張として手指の中手指節関節伸展(関節包前部における緊張),靭帯の伸張として前腕の回外(下橈尺関節の掌側橈尺靭帯,骨間膜,斜索の緊張)などがあげられる。

3)骨性
骨と骨が直接ぶつかる感触で,肘伸展(尺骨肘頭と上腕骨の肘頭筒との接触)の際の感覚である。異常な最終域感とは,本来見られる最終域感とは異なったものとして感知されるもので, これは関節の種類や関節運動方向,被験者の体格によっても異なるので注意を要する.表に代表的な異常最終域感をあげる。.

関節可動域制限(拘縮)について

拘縮の発生メカニズム

関節可動域制限がみられることを拘縮と呼び、関節構成体である、骨、関節軟骨、関節包、滑膜、筋肉、靱帯などの病変によって生じる。関節拘縮の発生メカニズムは、様々な研究が報告されているが、近年ではPTによる基礎的研究も多く報告されている。
沖田は、ラットの足関節を最大底屈位でギプス固定し、背屈方向の関節可動域制限が下腿三頭筋を切除することでどの程度改善するかを調べたところ、不動4週後で80.5°減少した関節可動域が、筋の切除により44.0°改善し、4週間の不動化でも骨格筋の変化に基づく制限が5割を占めていたと述べている。この結果より1か月以内の不動で起こる関節可動域制限の責任病巣の中心は骨格筋にあると考えられ、骨格筋の力学的特性の中の粘弾性要素の変化に起因するものと推測し、そのメカニズムを整理・理解することが重要と述べている。
関節の不動により、関節包、靭帯、筋、筋膜など組織の伸展性が失われ、さらにヒアルロン酸の合有量やコンドロイチン硫酸量、水分量が減少しコラーゲン緑維間の距離を縮めることになり拘縮へと進展していく。また、理学療法では不動による拘縮以外に関節外科術後の拘縮も多くみられる。これは手術により関節内や関節近傍の出血や軟部組織の侵棄が加わり、その後滑膜の肥厚、関節包や滑液包、靭帯の癒着,肥厚,線維化が起こり関節線維症と呼ばれる。

拘縮の分類

拘縮が生じた時期によって先天性拘縮と後天性拘縮に分けられる。先天性拘縮は、先天性多発関節拘縮症、先天性内反足、先天性筋性斜頭などがあげられる。

1)皮膚性拘縮
皮膚の熟傷後ケロイド形成や創傷,蜂窩織炎など炎症により瘢痕を形成し、それにより皮膚の弾性・伸展性を失い拘縮を起こす。

2)結合組織性拘縮
皮下軟部組織や腱、靭帯などの結合組織の変性などにより起こり、手掌腱膜の変性で発症するDtlpuytren(デュピュイトラン)拘縮は有名である。

3)筋性拘縮
筋自体の変性や退行変性により起こる拘縮であり、ギプス固定などで長期間固定を受けた筋の伸展性が低下するものである。他に肘関節周辺の骨折後に起こりやすいVolkmann(フォルクマン)拘縮は阻血性拘縮として有名である。

4)神経性拘縮
脳血管障害や脊髄損傷後にみられる痙性により発症する痙性拘縮や末梢神経麻痺に伴う弛緩性拘縮がある。

5)関節性拘縮
滑膜や関節包、靱帯などが炎症や損傷により萎縮、癒着することで発症する。

拘縮は軟部組織の組織学的変化が主であり、可逆性なので理学療法によって比較的改善が可能である。また、関節強直は軟部組織の線維化や関節の構築学的変化が主で不可逆的であり、理学療法では治療困難で観血的処置に頼らざるを得なくなった状態をいう。

要因

疾患(関節の変形や破壊)、外傷(関節内骨折、創傷、炎症)、不動(安静臥床、能力低下、麻痺、ギプス・装具固定)、疼痛

制限因子
筋、関節包、靭帯、腱、筋膜(筋上膜、筋周膜、筋内膜)、骨(関節の構築学的構造の破綻)、関節腔(線維化を生じ、瘢痕組織となる)、皮膚

関節運動に影響を与える症状
痙性(中枢神経障害)、浮腫、癒着(創部、関節腔、筋線維間、筋膜間など)、筋スパズム、防御性筋収縮

関節可動域運動について

関節可動域運動は、理学療法の対象分野のほぼ全域において用いられる使用頻度の高い技術である。すべての動作は、筋肉や外力の働きによって行われ、その運動は関節を軸として行われている。したがって、この関節が種々の原因によって障害を受けると、四肢や体幹の可動性が制限され、日常生活活動などに障害を与える。関節は骨と骨との間に多少の隙間があり、その間で運動が行われるような構造であり、骨格系の中では可動結合と呼ばれる。それぞれの関節には、固有の運動方向にて、その運動範囲すなわち関節可動域が存在するが、これらがさまざまな原因で障害されて不完全な場合に可動域制限と呼ばれる。また関節は骨、軟骨、滑膜、関節包、靭帯などで構成されており、その周囲にはこれを動かす筋や腱が付着し、皮下組織、皮膚がこれらを包み込むように覆っている。

関節運動の効果

1、滑液の潤滑を起こすことで生物学的活動を刺激する。それは、関節軟骨・半月などの関節内構成体・滑膜の酸素供給、栄養素の供給、老廃物の吸収には不可欠である。
2、関節内・周囲組織の伸展性を維持する。関節拘縮を予防するには、早朝より関節運動を行わなければならない。
3、関節運動によって関節内メカノレセプターが刺激され、中枢神経系に求心性信号が送られる。

関節可動域運動の目的

①予防と改善
予防的観点:その時点では可動域の範囲は比較的保たれているが、麻痺などによって自分の力で関節を動かせない場合に、関節可動域の維持と拘縮の予防として行う。
矯正的観点:拘縮により、筋やその他の軟部組織が粘弾性を失い可動域制限を呈する場合に、伸張を主に行う。

②全身状態の調節
筋収縮による筋ポンプ効果
循環の促進
軟部組織への正常ストレス刺激

③動作改善及び向上

関節可動域運動の種類

①他動関節可動域運動(passive ROM exercise)
・運動範囲は比較的保たれているが、麻痺や筋力低下により自動で動かすことができず、
他の力を用いて行う運動である。拘縮発現の予防として用いる。
・不動により関節拘縮が発言した場合に、抵抗に対する力がないために他の力を用いて行
う運動である。上記との相違点は矯正的な他動運動にある。
・手段:他者(主に理学療法士)
健側(非麻痺側)
機器(プーリー、CPM)

②自動関節可動域運動(active ROM exercise)
・当該関節の運動を引き起こす筋の収縮によって行える運動で、随意的でありかつ重力に抗して動かすことである。
・手段:対象となる関節の運動を引き起こす筋の収縮

③自動介助関節可動域運動(active assistive ROM exercise)
・重力に抗して動かすことはできないが、重力を除去した肢位や器具を用いることで可能となる運動である。
・手段:器具や肢位による重力除去環境にて関節の運動を引き起こす筋の収縮

④ストレッチングエクササイズ(stretching exercise)
・筋や関節周囲の難部組織の拘縮によって、運動方向に対して抵抗となる場合に、可動域の拡大を目的として行う。
・目立った可動域制限が認められない場合においても、円滑な動作の遂行やケガの予防として行う。
・手段:矯正的な意味として他動関節可動域運動と同様。

関節可動域運動の考え方

機能的に関節運動は必ずしも2対間の動きだけではなく、運動連鎖としての複合運動が存
在するため、一つの関節にとらわれるのではなく、その関節の運動に関与する関節の複合
的な評価、アプローチが必要となる。
①正常な関節運度動
関節運動は骨連結部位の運動であるが、正常な動きについての把握があいまいな理解にと
どまっていることが多い。正常な関節運動を行わなければ、弛緩性麻痺などを呈する対象
者の関節を逆に痛めてしまう可能性が高い。その理解のため、その観察と触察が重要とな
る。

②関節の遊び
関節は、その形態から考えられる運動方向以外にも副次的な運動が存在する。関節にとっ
て関節の遊びは不可欠であり、遊びが消失した状態では関節運動の制限、瞬間回転中心軸
の移動の不備、関節表面のある部位への過剰圧縮及び周囲組織へのストレスを生じさせる。
また、これが疼痛となり二次的な拘縮の危険性を有する。

③凹凸の法則
生体力学を基礎とした知識の応用であり、転がりやすべりが起こる関節では、骨とその関
節面の運動方向に対して2種類の法則が存在する。制限された関節ではこの運動が正常に
行われない場合があり、関節面の衝突や脱臼などが考えられる。

凸の法則:動かそうとする骨の関節面が凸ならば、関節面の滑る方向と逆の方向へ骨を動かす。
凹の法則:動かそうとする骨の関節面が凹ならば、関節面の滑る方向と同じ方向へ骨を動かす。

関節可動域運動の実際及び注意点

①ROMex前後の評価
的確な治療選択と治療技術の妥当性を見出すためにも、詳細な効果判定はその度に行うことを原則とする。

②肢位の変更は最小限に
評価や治療の際、対象者の肢位の変更は不快感を与えたり疲労感を与えたりするので、度々は行わず快適肢位を心がける。

③適切な肢位の選択と安定性の確保
少しの緊張でも関節運動に影響を与えるので、肢位は臥位を基本とする。やむを得ず他の肢位で行う場合には、不安定にならないようPTが体全体で密着したり、枕などを用いたりして安定肢位をとらせる。

④自動運動による運動学習
可動域を獲得しても動作に応用させなければならないので、関節可動範囲を拡大したのち、自動運動で再学習をさせる必要がある。

⑤高齢者への配慮
高齢者は、骨粗鬆症などの老年性疾患を抱えていることがあるため、通常の強度と同等に行ってはならない。障害がなくても可動域が制限されていることが多い。

⑥疼痛への配慮
目的に応じて他動運動や自動運動を選択するが、筋緊張を誘発し、逆効果とならないよう疼痛の強度には十分注意を払う。

⑦個々の身体特性への対応
関節構造や軟部組織の伸張性には個人差があり、肥満度、性別や年齢も影響する。参考関節可動域は健常者の関節可動域の平均であり、絶対的なものではない。したがって評価や治療、運動は基準をその個人によって選択し、個別的なプログラムを作成する必要がある。
例:(ⅰ)野球経験者の投球側肩関節の2nd内旋角は比較的障害の誘因なく制限されているが、外旋角は正常よりも大きい傾向がある。
(ⅱ)高齢者は活動性の低下に加え、老年的変化により関節周囲の軟部組織が障害の誘因なく制限されていることが多い。

⑧可動域制限因子の詳細な評価
筋だけでなく皮膚や軟部組織も制限因子となりうるので、その部位の評価や治療も必要となる。