手関節の運動学

今日は手関節の運動学についての簡単レポート公開していきます。

手関節の運動

前額面および矢状面の運動が組み合わさって大部分の手根の自然な動きが生じる。
運動方向
・掌屈、背屈:手根は矢状面で約130~140°回転する。平均して手根は0°から約65~80°屈曲し、0°から約55~70°伸展する。手根の可動域は、年齢、健康状態およびその運動が自動的か他動的かによって変動する。正常な場合、屈曲すべてを合わせると、伸展に比べ約10~15°大きい。どこまで伸展できるかは、厚い掌側橈骨手根靱帯の硬さの程度で決まる。
・橈屈、尺屈:手根は前額面で約45~55°回転する。橈屈・尺屈の程度は、橈骨と第3中手骨の骨体が作る角度で測定される。手根の尺屈は、0°から約30°の範囲で生ずる。橈屈は0°から約15°の範囲で生ずる。遠位橈骨に尺側傾斜が存在するために最大尺屈は通常橈屈の約2倍である。

橈骨手根関節の運動

運動方向
・掌屈、背屈:手根が背屈する際の関節包内運動は橈骨手根および手根中央関節での同期的凹状の凸の回転に基づいている。橈骨上で月状骨の凸面が背側へ転がり、同時に掌側に滑ると、橈骨手根関節では背屈を生ずる。手根が掌屈する際の関節包内運動は、背屈の場合と類似しているが、逆のパターンである。
・橈屈、尺屈:橈骨手根関節および手根中央関節双方での同期的な凹状の凸の回転によって生ずる。尺屈では、舟状骨、月状骨および三角骨は尺側に転がり、橈側にはかなりの距離滑る。橈屈の程度は、橈側への手根骨が橈骨茎状突起に対して衝突することで制限される。

手根中央関節(Midcarpal joint)の運動

運動方向
・掌屈、背屈:背屈では有頭骨頭が月状骨上を背側へ転がり、同時に掌側方向に滑る。掌屈の際の関節包内運動は背屈の場合と類似しているが、逆のパターンである。
・橈屈、尺屈:尺屈では、主として有頭骨が尺側に転がり、橈側へわずかに滑ることで生ずる。完全に生ずると三角骨は関節円板と接触する。橈屈では、手根中央関節ほとんど生ずるとされている。有鉤骨および三角骨は完全に橈屈が生ずるまでに分離する。
*手関節の可動域内訳
橈骨手根関節 手根中央関節
背屈(85°) 35 50
掌屈(85°) 50 35
尺屈(55°) 33 22
掌屈(25°) 12.5 12.5

手の内在筋(Intrinsic muscle)

内在筋は、指を操作する筋で近位と遠位の付着部は手の内部にある。比較的小さいが、指の繊細な調節には必要不可欠である。
・母指球筋:短母指外転筋、短母指屈筋、母指対立筋
主要な役割は、ものをつかむために母指をさまざまな対立位に位置させることである。
・小指球筋:短小指屈筋、小指外転筋、小指対立筋、短掌筋
共通の機能は、手をカップ状にして遠位横アーチを深くすることである。
・母指内転筋の二頭(斜頭、横頭)
母指と他の指間で物体をしっかりはさむときに重要である。
・虫様筋と掌側、背側骨間筋
虫様筋の機能はというと、筋収縮はPIPとDIP関節の伸展、MP関節の屈曲を生ずる。骨間筋はMP関節に作用して指の間を広げ(外転)、または狭める(内転)。
*手内筋
・虫様筋(Lumbricals)
深指屈筋から起こる4つの細長い筋である。二重神経支配を受ける(外側2つは正中神経、内側2つは尺骨神経支配)。4つすべての筋は、大きさと付着の仕方に著明な解剖学的多様性がある。虫様筋は腱の起始から深中手骨間靭帯の掌側を走り、MP関節の橈側を回りとおる。遠位では、筋は背側帽の斜走線維に混ざる。その停止は、伸展機構の中央索と側索を通じて筋が引っ張ることを可能にする。
機能:筋収縮はPIPとDIP関節の伸展、MP関節の屈曲を生ずる。この一見矛盾する作用が可能なのは、この筋がMPの掌側、PIPとDIPの背側を通るからである。

・掌側骨間筋(Palmar interossei):4つ
骨間の掌側を占める細長い、1頭の筋である。指への3つの掌側骨間筋の起始は、第2、4、5中手骨の掌側、側方にある。これら筋の停止は主として背側腱帽の斜走線維である。掌側骨間筋は第2、4、5MP関節を手の中央線に向かわせる。母指への掌側骨間筋は掌側の第1骨間を占め、主な停止は母指基節骨基部尺側であり、しばしばMP関節の種子骨にも付着する。この筋は、母指MP関節を屈曲させ、母指中手骨を中指へ向かわせる。
機能:MP関節屈曲・内転、IP関節伸展

・背側骨間筋(Dorsal interossei):4つ
骨間の背側を占める。掌側骨間筋と比べて、2頭の形状を持つ。一般原則として、背側骨間筋の停止は、基節骨基部側方、背側腱帽の斜走線維である。第1背側骨間筋の停止は主に骨である。背側骨間筋は、示指、中指、環指のMP関節を外転させ、中指を通る線から遠ざける。第5MP関節の外転は小指球の小指外転筋によって行われている。

手の外在筋(Extrinsic muscle)

外在筋は、指を操作する筋で、その起始は前腕または一部の筋は上腕の内・外側上顆である。
・外在指屈筋:浅指屈筋、深指屈筋、長母指屈筋
これらの筋は上腕骨内側上顆と前腕から起こる広い起始をもつ。
・外在指伸筋:総指伸筋、小指伸筋、示指伸筋
総指伸筋、小指伸筋の起始は上腕骨外側上顆からの共通腱で、示指伸筋の起始は前腕背側である。内在筋の活動があって初めて伸筋はPIPとDIP関節を伸展することができる。
・母指の外在伸筋:長母指伸筋、短母指伸筋、長母指外転筋
これら橈骨神経支配筋の起始は前腕背側である。

手の機能的肢位

重症脳卒中や高度四肢麻痺のような医学的状態はしばしば指の永久的変形を生ずる。治療の質や開始時期にかかわらず変形はしばしば不可避である。機能的肢位の重要点は、手関節:伸展20~30°、軽度尺屈、指:MP関節屈曲45°PIP・DIP関節屈曲15°、母指:外転45°である。わずかなカップ状の手指屈筋を適切な長さに保つ手関節位を提供する。

テノデーシス作用(Tenodesis action)

腱固定効果のことで、1つの関節運動が多関節筋の伸張を生じ、他の関節の他動的運動を招く作用である。
手関節の肢位は外在指屈筋の長さを大きく変化させる。自動的に手関節を伸展させ、指と母指が他動的に屈曲するのを観察すれば、これの意義を認めることができる。指を屈曲させる力は、深指屈筋のような外在指屈筋の伸張によって生ずる。また、手関節の完全屈曲肢位において外在指伸筋の伸張による同様のテノデーシス作用のために、指(特に示指)が他動的に伸展することを示す。本質的に、程度の違いはあれ、身体の全ての多関節筋にテノデーシス作用は生ずる。

Pinch:つまみ、はさみ

Pinchは把持(物体をつかむ、捕まえる、拾い上げるための指と母子の把持や握りの能力)の大部分の形式の1つである。Pinchはさらに、パワー(たとえば課題の正確さに関係しない大きな力)、または精度、正確さ(小さな力だが高いレベルの正確さ)の要求に基づいて、さらに分類される。
・パワー(鍵)つまみ(Power pinch)
母指を示指外側の間に物体を安定化させるために大きな力を要する場合に用いられる。パワーつまみは把持の非常に有用な形式であり、器用さとともに母指内転筋と第1背側骨間筋のパワー、母指と示指の感覚の鋭さを組み合わせる。
・正確さつまみ(Precision pinch)
パワーを必要とせずに母指を示指の間に保持された物体に繊細なコントロールを与えるために用いられる。この型のつまみには、指先(tip to tip)つまみ、指腹(pulp to pulp)つまみなど、多くの形がある。指先つまみは特に技巧さと正確さを要求されるときで、小さな物体に用いられる。指腹つまみは、より大きな物体により大きな接触面積を与え、把持の安全を向上させる。

手の機能

手は、支え・巧みに扱う・把持のための上肢の効果器として機能する。
・支え(Support)
ものを突っ張り安定化させるために、非特異的方法で機能を発揮する。また疲れたときに頭を支え、座位から立ち上がるときの助けのように、手は力を伝えたり受け入れたりするためのプラットフォームとして活用される。
・巧みに扱う(Manipulate)
①繰り返し、鈍い
→タイピングやひっかきなど
②連続的、なめらかな
→所持や編み物のように運動の頻度と強さが制御される
・把持(Prehension)
つかみ・握り(Grip)、つまみ・はさみ(Pinch)のときに使われる。物体をつかむ、捕まえる、拾い上げるための、指と母指の把持や握りの能力がある。
①パワー握り
→正確さではなく、安定性と大きな力が手から必要なときに用いられる。把持される物体の形は球状または円筒状の傾向がある。
②正確さ握り
→把持中に制御やある繊細さが求められるときに用いられる。
③パワーつまみ
④正確さつまみ
⑤かぎ握り
→母指を要しない把持の形式である。

手根管(Carpal tunnel)

手根骨の掌側では凹状を呈する。このへこみを覆う形で、屈筋支帯として知られる結合組織性の厚い線維性の帯が存在する。屈筋支帯は、手に存在する多くの筋、長掌筋および手根屈筋の主要な付着部位となっている。屈筋支帯によって、手根骨から形成された掌側の凹面は手根管に変えられている。正中神経および手の外在筋腱などの通路として役立っている。

手根管症候群(Carpal tunnel syndrome)

全9本の外在指屈筋腱は正中神経とともに手根管を通過する。手関節の長時間で極端な肢位での手の活動は腱を刺激する。手根管の閉じた比較的小さな区画のせいで、滑膜の腫脹は正中神経への圧迫を増すことがある。手根管症候群はこのように発生し、正中神経領域の痛みと異常感覚によって特徴付けられる。疾患の進行に伴い、母指球筋の筋力低下と萎縮が出現する。また、猿手も特徴的所見である。

ギヨン管(Guyon tunnel)

手根部の掌側において、尺側は豆状骨、橈側は有鉤骨、掌側は掌側手根靭帯、背側は深横手根靭帯で形成されるトンネルであり、手根管より浅層で尺側に位置する。

ギヨン管症候群(Guyon tunnel syndrome)

肘部管あるいは手関節部のギヨン管における尺骨神経の圧迫によって生じる。尺骨神経麻痺によって生じる特徴的所見に鷲手がある。鷲手とは、骨間筋と尺側の虫様筋の麻痺により、第2~5指の内転・外転が不能となり、薬指と小指は基節骨(MP関節)の過伸展と中節・末節骨(PIP-DIP関節)の屈曲位をとる変形手である。

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